そして、欧州の地に再び足を下ろす二人の姫君。

「懐かしい、っていうのかな。なんか不思議な気持ち」
「ふふ、じゃあそろそろ行きましょう」




「ようこそ、我らが姫の城へ」
「御客人と言う事であれば、歓迎いたす。真祖の姫よ」




 ある一人の人物の到来により、急転する事態。




「その御姿を拝見できて光栄です、黒き姫君」
「……道化の芸術家気取りが、一体何の御用かしら」
「公よりの言伝を伝えに。
 あの方は祖の会合を所望されております。どうか色善きお答えを」




 舞台は移る。月に最も近き座へと。




「よもや、そのような顔を見せられるとは思わなかった。
 お前さんも、石に躓く事が出来たのだな」
「うん! 私、楽しいって事がわかるようになったんだよ?」




「……あの陰謀家は、間違い無く妹の命を求めてくるわ」
「ふむ、して貴女はどうするつもりじゃ?」
「決まっているでしょう? 私は、あの子を守ってみせる」




「王は滅びた。生き汚くも器を創り残し、再臨を願っているようだが、それとても不完全。
 もはや消え去るべきなのだ、ブリュンスタッドなどと言うものは」
「それがゆえのこの策なのですかな」
「無論。どちらに転んでも、我らの損にはなるまいよ」




「我らの膝元でこのような無法が行われているのだ。座して見つめるのは流儀に合わぬ。
 灰は灰に、塵は塵へと。奴らの痕跡を一欠けらも残すな。殲滅せよ」
「本気? 全面戦争を巻き起こす気かい」
「ふん、今までの状態が不自然に過ぎた。我らは我らしく振舞う、ただそれだけの事」




「あの子に「姉さん」と呼ばれた時、本当に嬉しかったわ。今まで生きてきた中で一番。
 もう、それを失うなんて耐えられない」
「ふむ、それが故の決断か」
「ええ。そのためだったら、私はなんだって出来るもの」




 夜を生きる者。
 日の光を守る者。
 糸は縦に、横にと絡み合い、思惑の布を織り上げる。
 月の姫を彩りし、その布の色は鮮紅。




『結婚協奏曲』第四章 「咎人達への夜想曲(仮)」     2003年冬 連載開始