■ セイバーのおっぱい大きくしたいよー大作戦 ■
ユウヒツ
「はあ、まったく、困ったものですね」
セイバーは大きくため息をついた。目の前には散らかったガラクタが乱雑に散らばっている。士郎が修行の場としている土蔵の中だ。士郎は基本的に綺麗好きで散らかしたりはしない。そもそも散らかすほど物に執着しない。しかし、大河がいる。大河はどこからともなくガラクタを持ち込んでてそのまま置いていく。本来、士郎の工房たる土蔵にも多くのガラクタがいつのまにか集められている。
今のセイバーは家事を担当している。食事こそ作ったりはしないが掃除洗濯は昼間は家にずっといるセイバーが適任である。この広い屋敷にかつては士郎一人しか住んでいなかった。だが、週の大半は凛とアーチャー。桜とライダー。大河とイリヤが押しかけてくる。自然とゴミが増えて掃除に手間がかかる。
「やれやれです」
もう一度ため息をついて、セイバーはガラクタの整理に取り掛かる。
「うん? なんでしょう、これは」
ある程度ガラクタを片付けたところのことだった。金属製の大きなクッキーの箱を持ち上げたとき、中身が意外と重いことに気づいた。
「こっ、これは?」
開けてみるとエロ本がギッシリだ。
「……うっ、うう、シロウ。エッチなのはいけないと思います」
そう言いながらも中身をパラパラ見てしまう。とても胸の大きな女性のセックスをどきつく撮った写真集やこれまた胸の大きい女性のセックスの漫画などエロエロでたまらない。
「──これは切嗣も持ち物です。そうです。そうに決まっています」
……エロ本の発行日を見るとつい最近なのである。
「しっ、シロウ……」
読めば読むほど気が落ち込んでいく。エロ本をシロウが主有していた事ではない。健全なる男の子ならばそれぐらい認めなくてはならない。それぐらいの度量はセイバーは有している。仮にも王として一国をまとめたのは伊達ではない。ただ。ただ、
「ええいっ、どうして誰もこれもどいつもこいつも巨乳なんですか! 私が虚乳だからですか! あてつけですか! そうですか。そうですか。うっ、ううう」
ていっ。と本を地面に叩きつける。そう、メイド。女子高。OL。奥さん……色々揃っているがどれもこれも巨乳ばかり。まあ、健全といえば健全だ。これで微乳のろりぷにつるぺた少女ばかりなら別のショックを受けただろう。
セイバーはシロウの剣でありつづける事を誓った。いかなる嗜好を持っても関係ない。しかし、それでも、それでもショックなのは変わりない。
「そういえば……」
この頃桜の攻勢が激しいような気がする。この家でトップクラスの巨乳を武器に狭い台所でシロウを誘惑してくる。ライダーも口ではシロウに興味無いような事を言っているが目を見れば分かる。シロウに並々ならぬ関心を持っている。
ふと、セイバーは気づく。
──わたしは女としての魅力がないのではないか。
長身のライダーはすらりとしていてモデル顔負けのスタイルをしている。
桜も豊かな胸を始めとして女らしくふっくらとしている。
凛は先の二人と比べると胸の大きさは確かに負ける。しかし、標準的な手ごろな大きさ。ミニスカートから伸びる魅力的な太もも。全体的なバランスは一番ではないのか。
イリヤの体型は子供そのものだ。胸も貧弱。しかし、それを武器に無邪気にシロウにくっついていく。
大河も持ったりとした服に隠れているが意外とスタイルのバランスは良い。伊達に剣道で体を鍛えていない。色気というのは皆無だが、あなどれない。お姉さん属性は一番だ。
──自分の利点は何だ? 何も無いではないか。
そう考えると沈んでいく。
──せめて胸だけでも……。
セイバーは失意を抱えたまま土蔵を後にした。
今日の朝食当番はアーチャーだ。数日前から凛と一緒に泊まっている。トントンと軽やかに包丁を動かしている。今日はは洋風に攻めている。届いたばかり焼きたてのパン。具沢山のトマトスープ。サラダ。ベーコンをくるりと巻いたチーズオムレツ。新鮮な牛乳とオレンジジュースも用意済み。
「いい匂いですね」
セイバーが台所に入る。どんどんと用意される料理をうっとりとした様子で見つめる。
「セイバーか。もし、良かったら料理を運んでくれ。それから食器の準備もお願いする」
手を動かしながらアーチャーはてきぱきと指示をする。
「アイツはどうした?」
ぽつりとアーチャーは聞いてきた。
「シロウならまだ寝てますよ」
セイバーの言葉にアーチャーは皮肉げに唇を歪ませると、
「まあ、昨日はだいぶしごかれたみたいだからな。……また、あいつが何かしたのか?」
セイバーはアーチャーの言葉にはひょいと目を背けると、
「──別に。ただ、シロウはこの頃たるんでいるのです。だからしごいただけです」
そっけないセイバーの言葉にアーチャーは「ふっ」と笑うだけだ。
「アーチャー、一つ聞きたい事があるのですが」
朝食の準備を手伝いながらセイバーはアーチャーに質問をする。
「あの、……その、なんというか──」
ただ、なかなか本題に入ろうとしない。怪訝な顔でアーチャーは包丁の手を止めてセイバーの方を見る。
「身体の発育を良くする食べ物はなんでしょうか?」
少し顔を赤くしながら何とか口にした。
「身体の発育……?」
アーチャーはさらに怪訝な顔をした。眉をひそめて首を捻っている。
「あっ、ほら、アーチャーは背が高いではないですか。それでですね、いえ、別に他意はないのです。ただ、純粋な疑問なだけです。気にせず、ずずいと答えてください」
あせあせとまくし立てるようにセイバーは言った。手をぷんぷん振り回しているのがなんとも可愛い。
アーチャーは少しセイバーを眺めた後、口元の笑みをさらに深く笑い、
「ふむ。罪作りだな」
そう言った。
「なっ── シロウは関係ありません。わたし個人の問題です」
全然説得力が無いのはセイバーの顔を見れば分かる。
「ふふっ。そういうことにしておこう。ちなみに私はアイツだとは一言も言ってないのだがな」
アーチャーの言葉にセイバーはさらに顔を真っ赤にした。
「さて、質問に答えるとしよう。そうだな。やはりバランスの良い食事が一番だな。王道に近道は無い。これはセイバー。お前も理解しているだろう。全ての物事は一つに通じている。安易な道など存在しない。ただ。ただ、──強いてあげるとしたら牛乳だな」
少し考えて、アーチャーは言った。セイバーも「牛乳ですか……」と呟く。
「そうだ。乳じたいが総合栄養食と言っても過言ではない。動物は全て幼い頃に母親のミルクを飲んで大きくなる。体の発育を促すのにこれほど適したものは無いだろう。ただし、過信してはならないのは言うまでもないぞ。幼い頃と今とでは栄養の吸収率が違う。ちなみに西洋人と東洋人とでも栄養の吸収率が違うという。まあ、毎朝、コップ一杯の牛乳を飲み干す習慣を身につけるというところから始めたらどうだ?」
セイバーはアーチャーの言葉を深く考える。非常に説得力がある。「よし、わたしも今日から牛乳を……」と決意しかけたところで、
「うー、おはよ〜〜」
トボトボと凛がものすごい形相で台所に入ってきた。いつもの事だがやはり引いてしまう。
「アーチャー」
凛の言葉を受けて、
「既に用意してあるよ」
といって、コップ一杯の牛乳を凛に手渡した。
「うー」
そういって、腰に手を当てて凛はごくごく牛乳を飲み干した。「ぷはー」と一息つくとパッチリ目を覚ました凛がいた。
「フー、生き返る。ありがとね、アーチャー」
いつもの凛に戻り、空になったコップをアーチャーに手渡した。「どういたしまして」とアーチャーはコップを流し台の中に入れて水につける。
「…………凛」
絶望的な顔でセイバーは凛に呼びかける。
「なに、セイバー?」
うん? という顔で凛はセイバーの方を向く。セイバーは凛の一点を凝視しながら、
「──毎日牛乳を飲んで効果はあったのですか?」
その、質問には、
「もっちろん。おかげで骨は丈夫だし、虫歯は一つも無いわよ」
にっこり微笑んでそう答えた。しかし、セイバーは「そうですか。そうですか。それだけですか」とふらふらと頼りない足取りで台所から出て行った。
「ねえ、何かあったの?」
凛は首をかしげてアーチャーに聞いてみる。
「しらんよ。それより、凛。せめて、胸元のボタンぐらいきちんとはめたらどうだ。胸が半分見えかけているぞ。だらしが無い」
アーチャーは凛のパジャマ姿の胸元を指差した。上からボタンが二つ、三つが外れている。そのためふくらみが半分見え隠れしている。凛は「あっ……」と顔を少し赤くして「スケベ」とアーチャーを睨んだ。
「やれやれ」
と、アーチャーは肩をすくめた。
「はあー、どうしたものでしょうね」
休日の新都の通りはそれなりの人手で賑わっている。天気も良くてすがすがしい青空が広がる。なのにセイバーの心はどんよりしている。
「……シロウ」
ふと、立ち止まり、ディスプレイに飾られた衣装を見る。季節は夏に向けてきわどい水着が展示されている。壁にはポスターが貼られておりビールを片手にポーズを決めているモデルがいる。ピンクのビキニに包まれた胸は圧倒的なボリュームを有している。対して自分の胸を見る。軽く押さえてみる。とても慎ましい。こんな体型ではこのピンクの水着は似合わない。せいぜい隣りの中学生ぐらいのマネキンに展示されてあるシンプルな水色ワンピースぐらいだろう。これではとてもシロウを悩殺というわけにはいかない。
「はあー」
胸を押さえて大きなため息をもう一度つく。もうすぐ夏。海に行こうという話もちらほらあがってきている。なんだかさらに気持ちが沈んでいった。
「あら、セイバーじゃない。どうしたの、こんなところでため息なんか吐いて?」
不意に後ろから声をかけられる。振り向くとハンドバックを手に持ち、青いワンピースを着たキャスターが穏やかな笑みを浮かべてセイバーを見ていた。どこかの買い物の帰りなのだろうか。後ろにはアサシンの佐々木小次郎がたくさんの荷物を両手に抱えている。ちょっと辛そうに見えた。表情は涼しいが……。
ちらりとキャスターはセイバーの見ていたディスプレイを見る。もう一度セイバーを見る。セイバーの手は自分の胸を白いブラウスの上から押さえたままだ。少し考えて「ふーん」意地悪く笑う。
「なっ、なんですか、キャスター?」
セイバーが少し後ずさりする。嫌な予感がする。
「あら、綺麗な水着ね。特にこのピンクのビキニなんかいいわね。海で彼氏を悩殺するにはぴったりかしらね。けど、セイバー、あなたに似合わないわね。せいぜい隣りのお子様向けのワンピースが関の山かしら」
フフフと口元を軽く押さえてキャスターは笑う。セイバーは「なっ」と顔を赤くする。
「愚弄するのですか、キャスター」
セイバーの目が怖くなる。すうーとキャスターを睨みつける。
「慌てないで、セイバー。私があなたの願いを叶えることができるのよ。ふふっ。あんなピンクのビキニが似合う素敵なボディーラインが実現可能になるのよ。どう?」
軽く受け流してキャスターは言った。ただし、セイバーはまだ警戒を解いてない。
「──何が望みです」
魔術は等価交換が基本。キャスターの申し出にはきっと裏がある。
「あら、大した事ではないわよ。少し私に協力してもらえればいいの。簡単なことよ」
そう言って、キャスターはセイバーにやってもらいたいことを口にする。セイバーは目を見開いて驚いた。
空を見上げると鳥が飛んでいるのが見えた。こんな街中でも鳥は飛ぶ。健気に飛んでいる。空を見上げていたアサシンはそんな事を考えていた。手に持った重い荷物はなるべく考えないようにしていた。
「にゃにゃにゃーん」
猫耳はだワイの少女がカメラに向かってポーズをとる。手を握り締めて少し手首を曲げる。俗にネコパンチと呼ばれる握り方だ。コケテッシュに首をかしげて舌を出す。幼い顔立ちに相まってとてもかわいらしい。「にゃーん」
少女はもう一度鳴いた。軽く胸をそらす。薄い胸板はたぶたぶのワイシャツの生地をほんの少しだけ盛り上げる。それでもボタンが真ん中に一つだけしか留められていない。だから、胸元がはだけて薄い切れ込みが露わになる。胸の小さなポッチだけが生地を押し上げている。
「ふみぃー」
鳴きながらポーズを変える。四つんばいになって尻を高く上げる。フリフリと横に振る。ワイシャツの裾が垂れ下がり、白いショーツが露わになる。お尻のところに猫シッポも装着してある。プラプラ揺れている。「うにゃ?」
くいっと首を傾げて下から上を見つめる。誘うような目つき。ぴちゃぴちゃと小さな舌で赤い唇をぺろりと舐めてみる。
猫耳少女がポーズをとる度にカメラのフラッシュがまたたく。カメラはデジカメ。カメラマンはおぼつかない手取りで必死に写真を撮りつづける。
「にゃっ」
猫耳少女はカメラマンに向かって四つんばいのままお尻を向ける。振り向いて再び、フリフリとお尻を振る。
「にゃにゃっ」
ふと、気づいたように小さなボールに駆け寄る。「にゃにゃ」と鳴きながらボールと遊ぶ。
猫耳少女は何度もいろんなポーズをしている。何度も写真は撮られる。
「……もうよろしいでしょうか?」
不意にセイバーは声を上げた。なんだか疲れきった声をしている。
「えっ、まだよ、まだ。こんな機会は早々無いのだからこの際どんどん撮らないと」
キャスターは嬉しそうに言う。
「……しかし、いいかげん疲れました。結構、写真も撮りましたし、また、今度も手伝います。もうそろそろ──」
セイバーの懇願にキャスターは「仕方ないわね。また、今度、手伝ってもらうわよ」と‘猫耳’を外した。セイバーも‘カメラ’を降ろす。そう、モデルはキャスター。カメラマンはセイバーだった。ただ、キャスターの姿がいつもと少し違う。二十代半ばの容姿から中学生ぐらいの幼い容姿に変化している。綺麗な容貌も可愛いという形容詞がぴったり。大きな胸もセイバー並みのぺたんとした大きさしかない。
近くのテーブルに置いてあったガラスビンの薬をキャスターは一飲みする。するとすぐにいつもの容姿に変化する。少しだぶついたワイシャツ姿からぱっつんぱっつんの肌ワイ姿になる。
「はい、セイバー。試してみて。効果は見てのとおりだから」
そう言って、キャスターは先ほど飲んだ薬と同じのをもう一本渡す。セイバーはおずおずと受け取る。
ここはキャスターの柳洞寺にある私室。葛木と潤いある‘夜の生活’のために写真を撮っていたのだ。
「宗一郎様は優しいんだけど、少し淡白で……」
要望すれば阿修羅のように手荒くしてくれる。ただ、そうではなく自主的に‘燃え’上がらせたい。そのために色々と工夫している。猫耳はだわいもその一環だ。
鏡の前でいろんな衣装を纏い色々ポーズを取るがいまいちピンと来ない。誰かに写真を撮ってもらうのが一番良い。しかし、誰に撮ってもらう? 葛木は論外。一成や寺の修行僧も同様。さすがに男に撮ってもらうのは恥ずかしい。同じ理由で佐々木小次郎も却下。やはり同性が一番だ。というわけでセイバーに色々撮ってもらった。他にもブルマ、巫女など色々撮りつづけた。いいかげんセイバーも疲れてきた。
「……これがあれば」
セイバーが受け取ったのはキャスターの作った薬。いわば変身薬の一種である。基本は成長をコントロールするものだが容貌もある程度は調節できる。大きな胸の自分を想像しながら飲み干せば良い。
「しかし、本当に効果があるのですか?」
ふと、セイバーは疑問を口にする。確かにその通りだ。薬には個人差があり、人によって調整しなければならないのが普通だ。
「あら、先ほども説明した通りサーヴァントには効きやすいわよ。ただし、きちんと受け入れてね。あなたが抵抗しようとすると効果がなくなるから」
分かりましたと頷き、セイバーは意を決して薬を飲み干す。目を閉じて理想の体型を思い浮かべる。
……
…………
………………
……………………
…………………………
何も変化しなかった。
「キャスター?」
にっこりとセイバーは微笑んだ。
後にキャスターは語る。
とてもこわかった。
「あっ、あれ、変ね? サーヴァントは基本的には霊体だから身体の造形変化は受け入れやすいはずなのに。セイバー、抵抗とかしてないわよね?」
少し、あせあせとしながらキャスターは言った。セイバーは「いえ、なにも」と答える。
「もう一本、飲んでみる?」
飲んでみた。
やっぱり変わらなかった。
「キャスター?」
にっこりセイバーは微笑んだ。
やっぱりこわかった。
「どうしてなのー?」
キャスター自身も良く分からない。薬の作成に関しては自信がある。なのになんの効果も発揮しないとは。「カモン、アサシン」
キャスターは指をぱちんと鳴らしてアサシンを強制的に転移召喚する。いつもの優雅な格好でなく道着を着たアサシンが現れる。
「キャスター、頼むから急に呼ぶのはやめてくれないか? 今、ちょうど一成の友人に剣の手ほどきをしていたところなんだが……」
いささかげんなりした顔でアサシンはいった。
「そんな事どうでもいいわ。この薬を飲みながら子供の頃でも思い描いてみて」
そう言って、薬を手渡す。「早く!」キャスターの焦った様子に一息つくとアサシンは薬を飲み干した。
すると、十歳ぐらいの少年にアサシンが変化する。ぶかぶかになった裾を持ち上げながら「……これは?」と少し戸惑う。「うっ。可愛い」とキャスターの目が少し変わる。しかし、セイバーの咳払いとともに「キャスター?」という言葉に、はっとして。
「うん? うーん。やはり異常が無いわね」
と、不思議そうに呟いた。
「ごめんなさい。すこし原因を調べてみるわ。理論上は効果を発揮するはずなのにセイバーにどうして効かなかったか。何か掴めたら連絡するわ」
そう言って、キャスターは隣にある自分の工房に篭もってしまった。こうなると魔術師の常でそう簡単に出てくる事は無い。
「仕方ないですね」
と、セイバーは少しため息をついた。
「────どうでもいいが、できれば私を元に戻してからにしてくれないか? この格好では皆の前に出て行くことは出来ん」
前髪を軽く払って、アサシンは言った。もっとも小さい少年のままだといささか優雅さにかけるようだ。
「あれ、セイバーさんも来ていたのか」
あれから、仕方ないので帰ろうとすると境内で突然話し掛けられた。振り向くと美綴綾子が半そでのТシャツにトレーニングパンツとラフな格好でいた。手にスポーツバックをぶら下げている。
「綾子ではないですか。どうしたのですか、そんな格好で」
少し驚いてセイバーが尋ねると、
「うん? ああ、出稽古。葛木先生や小次郎さんに色々教わりにきたんだ。二人とも凄い腕前でさー。特に葛木先生。空手と聞いてたけど、あれは違うね。むしろ古流武術に近い。いやー、古流拳術を見る事ができるなんて思ってもみなかったなー。あっ、そうそう、聞いて傑作なんだよね。さっき柳洞と乱取り稽古していたらさ、突然目をそらして隙だらけになってねー。今だ。と思って組み付いたら「やめろ。やめぬかー」とわめき始めて。聞いたら「胸、胸が―」と顔を真っ赤にしていて。ああ、笑った。笑った。柳洞も純情だねー、ほんと」
美綴は屈託なく笑う。その後、小次郎のところで剣を見てもらっていたが突然、どこか行ってしまい、仕方ないから帰ろうかとしていたという。
「はあ、いいですね」
その話を聞いて、セイバーは思わずため息をつく。さっぱりとした性格と言動で気づきにくいが美綴もかなりスタイルが良い。Тシャツを盛り上げる二つの大きなふくらみは健康的な色気にあふれている。こんな姿で躍動感あふれる動きをしたら弾みまくるだろう。柳洞が照れるの無理がない。
「あれ、セイバーさんは胸が大きい方がいいの?」
セイバーの視線とため息に気づき、美綴は自分の胸をすくい上げるように持ち上げる。豊かなボリュームが寄せられる。セイバーは「うっ」とたじろぐ。
「ええ、まあ。やはり大きい方が色々と──」
少し小さな声になりながらセイバーはぼそぼそと言う。美綴は「ふーん」と頷きながら。
「まあ、少し気持ちは分かるけどね。武道やっているときは邪魔でしょうがないけど、女の子としては程々が欲しいし」
それで、少し考えて、
「大きくしたいの? 胸」
と聞いてきた。
「まあ、できれば──ですが」
顔を真っ赤にして答える。美綴は「うーん」と頭を捻って、
「あたしは残念だけど知らないなー。この胸は自然に大きくなったし。ただ──」
セイバーはその言葉に大きく身を乗り出す。
「ただ?」
聞き返すと、
「前に蒔寺が自慢してたなー。三枝さんのおかげで胸が大きくなったって。氷室さんも同じ事言ってたしなー」
その言葉にセイバーは、
「本当ですか! しかし、一体どうやって?」
目を見開いて聞いてみる。
「いや、詳しい方法は聞いてないよ。でも、今日、三人はちょうど学校で練習してるはずだよ。部活はないけど自主的にたまに集まってやるんだとさ」
その言葉を受けて、セイバーは、
「学校ですね。分かりました」
といって、身を翻して走り去った。
「あらら」
少し呆然と美綴は見送った後、
「けど、どうやって頼むのかな」
一応、セイバーの性格は知っている。自分は気づいたからいいが、普通は「胸を大きくしてください」と言い出せるものではない。
「仕方がない。フォローするか」
世話好きで細かいところまで気がきく美綴は携帯電話を取り出してメールを打ち始めた。
……なんだか少々心もとないですね。
自分の姿を見下ろしてセイバーは思った。現在は体操服とブルマーに着替えている。ただ、その下は何も来ていない。ブラは外してあるし、ブルマもじかに穿いている。寒くはないが少し恥かしい。
……しかし、これがこの服を着る作法と聞いている。それに秘訣かもしれません。考えてみれば理に叶っている。押さえ付けるばかりでなく、たまには解放するというのも分かる気がする。
あれからセイバーが学校にいくとグラウンドで三人娘が高飛びの練習をしていた。今日は休日のため他の生徒の姿はほとんど見られない。
「あっ、セイバーさん」
由紀香はセイバーの方を見ると柔らかい笑みを浮かべてひょこひょこと子犬のように駆け寄ってきた。
「どうしたんですか今日は?」
そう問われて、言葉に詰まった。なんていえばいいのだろうか。まさか「由紀香。あなたは胸を大きくする方法を知っているという。わたしに施してくれないだろうか」なんて言える訳がない。
「あっ、まあ、少し散歩してまして、ここまで来たら、皆さんの姿が見えたから何をしてるのかなと……」
しどろもどろに答えた。由紀香は「ふーん」と答えた。
「おーい、セイバーさんよ。もし、良かったら一緒に練習しないか? なーに、悩みとかそんな事はぱーと体を動かせば忘れちまうよ」
蒔寺が手を振って誘ってる。
「そうだな。そんな顔していては気がめいるというものだろう。もし、良ければ我々と一緒に汗を流すのもいい気分転換になると思うが」
ちらりと蒔寺を強い目つきで見たあと、氷室はセイバーにそんな事を言ってきた。
「……そんなにひどい顔をしてましたか?」
怪訝そうにセイバーが尋ねると。
「ああ、何を思い悩んでいるか分からないが気が塞いでいるのだろう。無理にとは言わないがどうだろう」
氷室に続いて由紀香が、
「そうですよ。私の予備の体操服を貸しますからどうです」
と、言ってくる。少し考えてセイバーは承諾した。
「まあ、確かにいい気分転換になるでしょう」
その後、由紀香と更衣室へ着替えに行った。そのときに言われたのが、
「えー、ダメですよ。体操服の下に何も着けてはいけないですよ。あっ、ブルマも直接はいてくださいね。下着の線が見えてみっとも無いですから」
といわれたのだ。恥かしくて渋っていたが、
「身体の発育も促進されるんですよ」
といわれて承諾した。
実際に体を動かしてみると気持ちいいものだ。なんだか自分がくよくよと悩んでいたのがバカらしくなる。青い空の下、走る。飛ぶ。それが心地よい。
──わたしは小さな事に悩んでいたかもしれません。
けど、やはり視線は三人の胸に行く。
由紀香の胸はこじんまりとしている。練習には加わらずマネージャーに徹している。ほよほよと走り回る感じはとてもかわいらしい。
蒔寺は結構大きい。凛かそれを少し上回るだろう。こんがりと日焼けした肌は健康的で躍動感にあふれている。
氷室は意外なことに一番大きい。白く透き通った肌をしているが動くと本当に惚れ惚れする。
二人とも体操服の下にブラは着けていないのだろう。動くたびに大きく弾む。それが羨ましくなる。
それでも、そんな悩みは体を動かしているうちにいつしか忘れていた。
「──はい、みんな、お疲れさま」
由紀香はみんなにスポーツドリンクを配る。始めは走り高飛びを中心に練習していたが、いつのまにか五十メートル走や百メートル走。最後は三人で千五百メートル走を競争する事になった。
結果は蒔寺、セイバー、氷室の順だった。
渇いた咽喉に冷たいドリンクが染み込んで潤していく。心地よい疲れが広がっている。久しぶりにこんな風に体を動かした。剣の稽古はいつもしている。けど、こういうのもたまにはいいのではないか。
「じゃあ、少し早いですけどこれで終わりにしますね。みんな、後片付けの方に入りましょう」
一休みした後、由紀香は手を叩いて言った。時間的に少し早い気もするがそれもいいだろう。
「分かりました。指示の方をよろしくお願いします」
セイバーは立ち上がり由紀香の方を向いた。にっこりと由紀香は微笑んだ。ただ、三人娘が視線で会話しているのに気づかなかった。
「ここでよろしいのですね」
セイバーは練習で使った器具を片付けていた。走り高飛びに使ったマットも既に体育用具室にみんなで運び入れた。後は細々した物をマットの隣りで整理する。由紀香は何も言わずひょこひょことセイバーの後ろに立つ。
「セ・イ・バーさん」「ひゃう」
突然、後ろから由紀香がしなだれかかってきた。
「どっ、どうしたのですか由紀香? いや、そんなに引っ付かれるとちょっと……」
少し、焦った様子でセイバーは言う。由紀香はふうーとセイバーの耳に息を吹きかける。「うぅっ」と少しセイバーうめく。
「聞きましたよ。胸、大きくしたいのですよね?」
囁くように由紀香は言ってくる。同時に両手は後ろからセイバーの胸を撫でまわすように揉んで来る。
「あっ、はぁ、どっ、どうしてそれを……」
びくんっ、と体が跳ねる。気持ちいい。繊細で大胆。細くて可愛い指がセイバーの慎ましい胸を這いまわる。体操服の上から楕円を描くように揉んで来る。
「綾子からメールを貰ったんだ」
携帯を取り出して蒔寺は言った。
「私たちの胸を大きくしたやり方をセイバーにもしてほしいとな。もっとも、美綴もその方法は知らないのだが」
氷室はそう言いながら体育用具室のドアを閉める。
「わたしたち、いつも‘自主’練習の後はこうしているんです。三人だけの秘密ですけど、特別にセイバーさんも仲間に入れてあげますね」
いいですと言おうとしたが乳首を摘ままれて言葉に出せなかった。強く強く摘まんでくる。
「由紀っちの指は気持ちいいだろう? おかげで胸がどんどん大きくなってさー」
「三人で一番うまいのは確かだな。セイバーの胸もじきに大きくなるだろう」
二人ともにじり寄って来る。四人はもつれこむようにマットに倒れこんだ。
「……あっ、あっ、だめです。だめです。それは──」
セイバーは空気を求めるように上を仰いだ。誰も脱いではいない。ブルマと体操服を着けたまま交じりあったる。大きなマットは四人が寝てもまだ余裕がある。セイバーを三人が舌と指で攻め立てていた。
「ふふっ。何がダメなのですか、セイバーさん?」
由紀香がいつものように微笑んでくる。子犬のような笑顔。なのにとても淫靡。舌でセイバーの胸の乳首を体操服の上から舐める。口が噛む。唾液をとろりと垂らして体操服を濡らす。勿論指で刺激するのも忘れてはいない。薄い胸がこねくり回される。そのたびにセイバーは身を捩じらせて甲高く鳴かされる。
「胸、大きくしたいでしょう? だったら、わたしに任せてください」
そう言って、乳首を強く噛んだ。「あぁぁっー」とさらにセイバーは鳴いた。
大きく開いた口に唾液を流し込まれた。セイバーの顔は唾液でべちょべちょだ。氷室が耳、顔、首筋を舐めまわしてくる。たっぷりと唾液をなすりつけていく。その舌技は絶妙だ。
「こういう綺麗な物を汚していくというのも一種の快感ではある」
そう言って、氷室はセイバーにキスをする。柔らかい舌がセイバーの口の中を蹂躙する。「うっ、うむ、うぐ、うは」
熱い舌が入ってくる。さらに氷室は耳たぶを軽く摘まんだり、首筋を軽く引っ掻いたりする。くつぐったいのと焦らすような快感がセイバーを襲う。
「いいねー。こんな綺麗な足をしていて」
靴は脱がされた。靴下も取られた。素足を攻めていくのは蒔寺だ。足の指の一本一本を丁寧に舐めていく。ふくらはぎや膝頭も舐められた。太ももの外側も内側も舐められた。けど、ブルマは手をつけていない。薪寺はふくらはぎを揉んだり太ももに指を這わせたりはしている。太ももの付け根まで指は近付いてきた。すぐに、離れていった。
「氷室、交代してくれ」
蒔寺と氷室が位置を交換する。
「さて。舐めてくれるかな、セイバーさん」
薪寺はセイバーの顔に跨る。セイバーの眼前にブルマに包まれた蒔寺の股間が見える。彼女も下着は着けずに直穿きしている。おずおずと舌を伸ばす。
「あっ、はあー、うっ、うまい。うまいよ。うう……」
蒔寺は嬌声を漏らす。セイバーが舌を伸ばすと既に興奮しているのかブルマは湿り気を帯びていた。生地の上から濡らすように舐めまわす。どんどんブルマは濡れる。セイバーの唾液と蒔寺自身の液で濡れていく。「ひゃう」
突然、薪寺は甲高く鳴いた。由紀香に体操服の上から乳首を摘ままれた。ブラは着けていない。コネコネとこねくり回して、、
「ダメですよ、蒔ちゃん。今日はセイバーさんにご奉仕するんですから」
蒔寺の耳たぶを噛んで囁く。指の動きは止まらない。
「分かった。どくから。どくからやめて」
身を捩じらせて蒔寺は懇願する。下からセイバーにブルマの上を舐められ、胸は由紀香の指に攻められる。どんどん激しくなる。
「ダメですよ。おしおきです。セイバーさん。もっと激しく舐めてください。強く噛んでもいいですよ」
そう言って由紀香は蒔寺の胸を大きく掴み、さらに乳首を絞るように捻る。セイバーは歯でブルマの上からを引っ掻く。直接なら傷つくかもしれないが厚い生地が緩和してくれる。
「くうぅぅぅぅぅぅぅ。だめーーーー!!」
ひときわ大きく鳴いて蒔寺は果てた。体中の力が弛緩して股間から熱い液体がほとばしりセイバ―の顔を濡らしていく。
「あらら、蒔ちゃん、行儀悪いですよ。セイバーさんの顔におもらしするなんて。舐めて綺麗にするのですよ」
由紀香の言葉に蒔寺はよろよろと身を起こすとセイバーの顔にかけた自分の尿を一心不乱に舐め始める。セイバーは「あっ、はぁ、あぁ」と舐められるたびに身をよじる。
「そろそろここも攻め時ではないかな」
氷室はセイバーのブルマに包まれた股間を指差す。誰も手を出していない。けれど厚い生地は濡れて染みている。
「そうですね。そろそろ頃合だと思います。氷室さん。お願いしますね。わたしはセイバーさんの胸を大きくするために、もっともっと刺激しますから」
由紀香の言葉に「心得た」と氷室が返事する。ブルマに包まれたセイバーの股間に氷室の指と舌が迫り来る。
「さあ、セイバーさん。胸、大きくしましょうね」
由紀香が囁いてくる。蒔寺に唇を吸われ、セイバーは返事を出来なかった。二人の舌と指が到達したとき、セイバーはさらに鳴いた。
ブルマに包まれたままの饗宴は果てしなく続きそうだ。
「はあー、ひどい目にあいました」
ため息をつきながらセイバーは深山の商店街を歩いていた。あれからさんざん鳴かされ、イかされた。ブルマと体操服はとうとう誰も脱がなかった。どこで覚えたのか由紀香の腕は絶妙だ。氷室の舌技も大したものだが、由紀香にはかなわない。蒔寺の荒々しくぎこちない攻めもいい刺激だった。
「──でも、これで胸が大きくなるのでした……」
話を聞くと確かに由紀香の攻めで二人の胸は大きくなったという。さんざん由紀香に胸を弄られ舐められた。なんだか張っているような気がする。また一緒にやりましょうと誘われた。どうしようかと少し悩んでいる。
「あっ、ちょうどいい所にいたわね、セイバー」
ふと、声をかけられる。振り向くとキャスターが立っていた。夕食の買い物なのかスーパーの袋をいくつも持っている。後ろにはまだ、子供のままのアサシンが買い物袋を持っていた。どうやら気に入られて戻してくれないみたいだ。半ズボンに野球帽とやんちゃな格好で弄ばれている。本人は達観した表情で空を眺めていた。
「あれからね調べてみたの。どうしてあなたにあの薬が効かないか。……気を落とさないでね。結論から言うとあなたの体型を変化させる事は‘絶対’に無理ね。たぶん、どんな方法でも」
キャスターの言葉に奈落に突き落とされた気分になる。
「どっ、どういうことですか? それは!」
思わず、身を乗り出して少し大きな声を張り上げてしまう。
「これはわたしの所為でなく、あなた自身の問題なのよねセイバー。あなた、聖剣の加護を受けているでしょう。これがある限り、体型の変化はとても無理みたい。聖剣の加護を解くかそれ以上の力を与えるか。どちらにしても私には手が負えないのは確かね」
聖剣を抜いたとき、セイバーの成長は止まった。これは聖剣の加護による。傷ついても鞘の加護ですぐに癒される。ある意味不老不死になったのだ。だが、その影響でセイバーへの身体に影響を与える魔術は効かなくなっている。神秘はより強い神秘に打ち消される。キャスターも神代の世の魔術の使い手だがセイバーへの聖剣の加護は打ち破られない。もし、方法があるとすれば先にキャスターが挙げた方法ぐらいだろう。なお、マーリンはセイバーの性別を一時的に変化させた事がある。これはその系統の魔術に熟知していたためだ。これはキャスターが劣るというわけでなく魔術の系統が異なるという事にある。古代ギリシャとイングランドではやはり微妙に違う。一応蛇足まで。
………………………。
どれだけ呆けていたのだろうか。頭が真っ白になっていた。だから、
「よう、セイバー。どうしたんだ、朝から留守にして?」
後ろからやはり買い物帰りの士郎に話し掛けられたとき、目から涙がじわりとこぼれた。
「シロウの所為です」
涙目で睨みつける。
「シロウの所為です」
そのまま士郎の胸に飛び込みポカポカと叩いていく。
「おっ、おい、どうしたんだ一体?」
訳が分からずに士郎はうろたえてしまう。
「そんなに巨乳が好きですか。ええ、どうせ、私は微乳です。平らです。虚乳です。しかも、もう成長しません。どうですか! すごいでしょう! さあ、捨てなさい! わたしはシロウの剣です。ですから胸なんて必要ないのです!」
セイバーは泣きじゃくりながら訳の分からない事をまくし立てる。きょとんとしていた士郎は、
「あー、一体、何の事だかわかんないだけどさ」
と、困った顔で呟いた。
「分からない? 土蔵の中のエロ本です。どれもこれも巨乳ではないですか! シロウの好みは桜やライダーのようなボリュームたっぷりの巨乳なのでしょう?」
とりあえず、大声を張り上げないで欲しいと士郎は思った。周りの人たちが立ち止まってこっちを見ている。奥方たちはひそひそと話をしているし、店主たちも「やるねー」と笑っている。
「えっと、セイバー。何が言いたいのかよく分からんが……、俺が一番好きなのはお前だぞ」
士郎は肩を掴んでセイバーの目を見ながら言った。
「え?」
セイバーも涙に濡れた顔で士郎を見る。
「俺はセイバーの事が一番好きなんだ。あのとき土蔵で出会ってから俺はお前に心を奪われたんだ。それじゃあダメか? それは今でも変わらない。それじゃあダメかな?」
頭の中が赤くなる。もう熱くて熱くてたまらない。だから、セイバーは、
「ならば証明してください」
といった。すると士郎はすかさずセイバーを抱きしめてキスをした。周りから歓声が起こる。
「これじゃあ、だめかな」
少し真っ赤になって士郎は囁く。
「……シロウはずるいです。これでは何もいえません。けど、納得しました」
ぼつりとセイバーは呟いた。
「──とりあえず、帰ろうか?」
今更ながら自分のしたことに気づいて士郎の顔はさらに真っ赤になる。
「……ええ」
セイバーは頷いた。周りから拍手が沸き起こった。
「なあ、セイバー。よく分からないけど、俺が何か悪いことしたんだろ? お詫びに今日は無理だけど明日か明後日にはセイバーのリクエストしたものを作ろうかと思うんだ。何がいいかな」
手を繋ぎながら歩く。セイバーは士郎の言葉を少し考えて、
「いえ、今夜頂きたいです」
といった。
「えっ、今日?」
士郎が少し驚くと、はいと頷いて。
「──今日は色々あって少し疲れました。だから、シロウの魔力をたっぷり頂きたいです」
顔を真っ赤にして言った。
「あー、分かった。努力する」
士郎も顔を真っ赤にした。
二人の顔は夕日に照らされて赤い。伸び行く影は一つになる。寄り添って家に帰っていった。
おわり
お・ま・け
「あれ、小次郎さん?」
三枝由紀香がいつものように山門の小次郎に会いに行くと小さく縮んでいた。
「あっ、いや、これは──」
珍しく、小次郎は焦る。いまだ、キャスターに解いてもらえず子供のままなのだ。
「何があったか分かんないけど──似合ってますよ」
にっこりと由紀香は微笑んだ。いつものように雅な着物姿でなく、腕白小僧のようなTシャツ半ズボンだ。物干し竿の代わりに野球のバットを持たせてある。キャスターの趣味なのだろうか。
「そっ、そうか」
少し、動揺しながら小次郎は返事した。
「──でも、少し汚れてますねー。そうだ、今日、うちに誰も居ないんです。だから、お風呂に入りませんか? キレイキレイにしてあげます」
手をぱちんと叩いて、由紀香は提案した。「えっ?」小次郎は返事をする暇もなくずるずると引きずられていった。
三枝由紀香の家はこじんまりとしながらもお風呂はとても大きかった。
「お風呂は大きいほうがいいって。お父さん達の方針なの」
三枝家には小さな弟達が沢山いる。小次郎も由紀香が連れて来た弟達に会った事がある。本当にやんちゃでにぎやかだった。
「──それは分かるが、どうして、由紀香殿も一緒に入るのかな」
少し顔を赤らめて、視線もそらしつつ小次郎は言った。ぽいぽいと服を脱がされ、由紀香もバスタオル一枚で風呂に入ってきた。
「なんでって……一緒に入らないと体洗えないでしょう?」
とても、不思議そうに由紀香は答えた。
「ああ、いや……しかし」
確かに小次郎は今は子供に変じている。しかし、本来の精神は大人のままだ。そして、由紀香はまだ未成熟とはいえ、やはり女であり、その──どうしても意識してしまう。
「ふふ、おかしなことね。とりあえず、体をきれいに洗いましょうね」
そういうと、由紀香は洗面器で湯船から温かいお湯をくむ。まずはバシャリと頭から小次郎の頭にかける。
「うわっ」
驚く小次郎を尻目に長い髪をたっぷり濡らした後はシャンプーで丁寧に洗い始める。ちなみに大容量だが特売で買った量販品だ。
「ほんと、きれいな髪してるね」
まず、頭に指を立てて、少し強めに乱暴に洗う。次に長い髪を先端まで丁寧に撫でるように揉む。
「うらやましいなー。女の子にはきれいな髪は憧れなんだよ」
たっぷりと泡の付いた髪をしっとりと揉みながら、由紀香はうらやましそうに呟いた。
「そういうものなのか」
小次郎は何とか答える。由紀香は素肌にバスタオル一枚。自分も裸に腰にタオル一枚である。
「ええ、そうですよ。女の子は結構欲張りなんですよ。ほら、もう少しきれいになりたい。もっと料理がうまくなりたい。そういうことで一杯なんですよ」
小次郎の頭に湯船から汲み上げたお湯をかける。次はスポンジにお歳暮とかで貰った石鹸を擦り泡立てる。
「ふむ。それはなんとなく分かるような気がするが。いや、それは女だからでなく男にとてあると思うぞ」
小次郎はたっぷりと泡立てられたスポンジで背中を擦られる。丁寧で結構心地よい。
「ふふ、違いますよ。やっぱり男の子と女の子は根本的に違うんです。ほら、男の子はどちらかというと理想とか夢とかそういうのを求めがちですよね。でも、女の子は現実的と言うか即物的なところがあるんですよ」
由紀香の言葉に小次郎は「……ふむ」と考え込む。
「──だから、こういう事もするんですよ」
突然、由紀香は小次郎の背中に体重をかけてきた。やわらかい感触が背中から伝わる。バスタオル一枚越しとて素肌は感じる。
「ゆっ、由紀香殿?」
小次郎は少し、焦りの声を上げる。
「女の子はね、男の子の思うような幻想的というか神秘的でないのよ。額縁に飾られた絵画でないの」
ねっとりと由紀香の手は小次郎の小さな胸を這う。泡で柔らかくすべる。細い指の感覚が心地いい。軽く爪も立てられる。刺激的だ。
「いつも、かっこいい小次郎さんがこんなに可愛くなると──もう我慢できなくて」
というわけで頂きますね。そう言うと、由紀香は小次郎に覆いかぶさった。美味しく頂かれたのだ。
「ふうー」
小次郎は一息を吐く。布団の上に満足そうに眠る三枝由紀香の姿がある。あのあと、壮絶な戦いが繰り広げられた。あどけない顔と肢体に秘められた絶技。危うくやられるところであった。しかし、小次郎とてまがい物とはいえ英霊である。新たに編み出した秘剣「三段突き」を巧みに応用し、勝利を収めたのだ。
「ふむ、柳洞寺で読んだ書物が役に立ったな」
もともとのきっかけは退屈しのぎに読んだ本だ。自分が生きた時代は過ぎ去り頃、幕末を舞台としている。
もう一息を吐く。裸で眠る由紀香に布団をかけなおす。
「さて、寝るとするか」
そのまま由紀香の隣にもぐりこむ。その二人の幸せそうな寝顔は、はたから見れば幸せそうな姉弟に見えただろう。
おわり。
どうも、ユウヒツです。かなりお久しぶりです。今回の作品は風原さんのサークル「真夏の夜の夢」に収められた本、騎士王円舞曲Uから転載したものです。まだ、ホロゥ前の作品で今から見れば色々と齟齬がありますが(蒔寺の胸のサイズとか)あえて変えずにそのまま収めました。
ちなみに僕は少数派かもしれませんが三枝由紀香は攻め≠セと思います。あと、多数派かもしれませんが蒔寺は受け≠ナすねー。氷室さんはどっちだろう。うーむ。
では、少しでも楽しんでくれることを期待してー。
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