| 月姫 ショートストーリー
第一夜 夕方 遠野家厨房にて
「ありがとうございます。志貴さん。それにしても見事な包丁さばきですねー。包丁だけならわたし以上 なんだか誉めているのかけなしているのかよく分からない感想をする。
「そうですか……ところで有間の家と遠野の屋敷では、やはり生活はぜんぜん違いますか?」 琥珀が料理の下ごしらえをしながら聞いてくる。志貴は自分が手伝う分は終わったので、包丁を洗い 「そうだな。やはりぜんぜん違うよ。有間の家も大きかったけど、ここはまさに豪邸だし。それに有間は 「やっぱり、志貴さんは和食のほうがいいですか? まあ秋葉さまは洋食派なんでそうそう和食は出せま 琥珀の言葉に志貴は少し考えてから、 「うーん。そうでもないよ。琥珀さんの料理はどれも美味しいから。これはこれで新鮮だよ。ただ、一緒 巧みに一緒に食事をとろうと誘いをかける。
あっさりかわされた。 「そうだね。さっきも言ったけど給食ぐらいしか洋食は食べる機会は無かったしね。ハンバーグを作っ そういって、志貴は笑う。 「あははっ。凄いですね。やはり有間の家も遠野の一族です。頑固で一歩も譲らない所がそっくりです」 秋葉は言うまで無く頑固で一度言い出したら聞かないのは言うまでも無い。 「確かに。秋葉も大きくなったら啓子さんみたいになるのかな」 いつも落ち着いて静かに笑う啓子さん。でも、譲らない事は決して譲らない。前にこんな事があった。 「あははっ、そうかもしれませんねー。ところで志貴さん。有間の家にいた頃で一番の思い出の料理
は 琥珀の問いに対して志貴の答えは意外なものだった。 「そうだな。そういうのもあるけど、やっぱり、一番の思い出はカレーかな。うん」 懐かしそうに志貴は笑っていた。 「カレー……ですか」 昏く静かになっていた。 「そう。有馬の家で唯一洋食だったしね。もっとも隠し味にしょうゆとかカツオ節とか使われていたけど 直死の魔眼と並ぶ志貴の必殺技、女殺しの笑顔で琥珀におねだりしてみる。 「だめですよー。わたしはカレーを料理と認めてないのですから。さっ、無駄話はこれぐらいにして夕食 ああっ忙しい、忙しいと笑いながら琥珀はてきぱきと夕食の準備をしていた。 第二夜 お昼 学校の茶道室にて
シエルは志貴を睨みつけながら静かに言った。
「えっ、何か言った? 俺」 志貴は箸を持ったまま固まっていた。 「ええっ、言いました。カレーは料理でない。それは一体どういう意味でしょう。説明してもらえますよね」 シエルは巷で言われるほどカレージャンキーではない。しかし、カレーに対する愛情は深いのは
確か 「あっ、いや。違うんだ。 俺はカレーは立派な料理だと思っているし、好物の一つだよ。ただ、この
前に そういって、慌てて説明する。説明を聞くうちにシエルの殺気は消えていく。 「そうですか。そうですか。そんな事があったのですか」 ほっと一安心する志貴。だが、シエルが考え込んでいるのを見てるうちに不安になる。
「あの……シエル先輩。これは琥珀さん個人の意見ですからね。個人の意見は尊重しないとね」 志貴は弱々しく声をかける。 「もちろんですよ。わたしだってそんなに心が狭いわけではありません」 にっこり微笑むシエルに一安心。 「例えばわたしはサバの味噌煮などは苦手であまり食べたいとは思いません。琥珀さんがカレーが嫌い なぜだろう。いやな予感がするのは。 「けど、カレーは料理で無いというのは間違ってますねー。カレーはインドはもとよりヨーロッパ、
東南 ああっ、やっぱりー。 「あの、シエル先輩? 個人の意見は……」 無駄だと思うが聞いてみる。 「遠野くん。わたしは嫌いですけどサバの味噌煮は料理として認めてますよ。ちゃんと日本の文化を
尊重 やっぱりシエル先輩は異端狩りだー(大々偏見) 「ふふっ、カレーが料理で無いですか。そうですか。彼女に教えてあげましょう。カレーの本当の素晴
ら ふと、頭によぎる。シエル先輩が琥珀さんに迫りカレーを強要されて泣き叫ぶ……
「というわけで、遠野くんにも協力してもらいます。よろしいですね」 にっこり微笑むシエルに志貴は断る事ができる筈無かった。
第三夜 昼前 公園にて
アルクェイドはプリプリ怒りながら志貴に文句をいっていた。 「しょうがないだろう。シエル先輩の要望だし、あの暴走に俺が止められるとでも思ってるのか」 志貴もウンザリした口調で歩きながら言う。現在二人はシエルに呼ばれて公園に向かう途中なのだ。
「それにしても、よく妹が了承したわね、こんな事」 アルクェイドの言葉に志貴は、 「ああ、俺もそれは驚いてる」 と同意した。 「いいですよ」 秋葉の言葉に一番志貴が信じられなかった。 「ただし、屋敷内の物を壊したりしたら兄さんに弁償してもらいます──さしあたって昼食代を半分に減 とキツイ言葉が返ってきた。
「頼むから喧嘩しないでくれよ。俺の唯一の収入が減るんだから」 志貴の現在の収入源は昼食代の一日五百円のみ。バイトは一切禁じられている。 「わたしは別に喧嘩しようとは思わないわよ。シエルの奴が突っかからなければだけどね」 アルクェイドの返答に志貴はため息をつくしかなかった。
「カリー・ド・マルシェ!」 アルクェイドは驚愕の声をあげる。 「おいっ。あんなメタメタ怪しい奴と知り合いか」 志貴は思わず突っ込む。 「なに言ってるのよ志貴。彼は死徒二十七祖に匹敵する力の持ち主で暫定的だけど真祖の力も有して アルクェイドの思いがけない言葉に志貴は驚く。
「あら、真祖の姫君じゃない。それにあなたがシエルのいい人の志貴君ね。よろしく。あたしはカリー・ド・ カリーが志貴たちに気が付くとおねぇ言葉で挨拶してきた。
「どうして、あなたがここに」 アルクェイドは油断無く聞いてみる。負けるとは言わないが戦ったら強敵な相手なのは確かなのだ。 「シエルに呼ばれたの。何でもカレーを料理と認めない不届き者がいると聞いてね。徹底的に教育する カリーの言葉には志貴はぽかんと聞いていたが。 「琥珀に何するつもり。返答次第ではただで置かないんだから」 と、アルクェイドは激昂していた。 「はいはい。大丈夫ですよアルクェイド。わたしも彼も力尽くでする積りは全く無いですから」 シエルが待ち合わせの場所にやって来て言った。 「シエル。一体、なに考えているのよ。カリーまで連れてきて」 アルクェイドの言葉にシエルは、 「もちろん、さっき言ったとおり琥珀さんにカレーの素晴らしさを伝えるの。それにはカリー。そしてアル シエルはアルクェイドの手を握り懇願する。 「あっ、いや、わたしは別にカレーなんてどうでも……」 シエルの眼の輝きに押されてアルクェイドはしどろどろになる。 「それはいけません。カリー。まず、始めにアルクェイドから教育するわよ。あそこに連れていきます」 そう言ってシエルはアルクェイドを引っ張っていった。 「いや、そういう意味じゃなくて、だから──助けて志貴、拉致られるー」 ネコアルクとなって手足をじたばたするが、 「人聞きの悪いことを言わないで下さい。さっ、カリー行きますよ」 そういって、シエルとカリーはネコアルクを連れ去っていった。 「えっと」 呆然と事の成り行きを見守っていた志貴だが、慌てて追いかけていった。
第四夜 昼前 メシアンにて
ネコアルクは尻尾をピーンと伸ばして言った。 「カレーがこんなにおいしいなんてわたし知らなかったー」 アルクェイドはそう言うとさらにカレーを食べる。 「本当ね。日本でここまで本格的なインドカレーが味わえるなんて信じられない」 得意げに誇るシエルに「始めに知ったのは俺だー」とはいえない志貴だった。 「それで、カレーの素晴らしさを知ってもらえましたか」 シエルがアルクェイドに話し掛けると、 「うんうん。とってもオイシイよー。志貴ー、今度カレーを作って。志貴が作るともっと美味しくなると思う いきなり惚気はじめる。 「そうですか。そうですか。ならば、金を出してください」 何とか抑えたシエルはアルクェイドにそういった。 「はい?」 アルクェイドは可愛く首をかしげた。 「わたしが必要だといったのはこの事だったのねー」 アルクェイドは少々ウンザリした様子で言った。
「ふうー。いくら金を積んでもレシピは教えてらえませんでしたが、なんとか厨房は使わせてくれる
事は シエルとカリーが戻ってくると小切手帳をアルクェイドに返していった。 「いくら使ったの」
志貴から見ればぜんぜんはした金ではないのは言うまでも無い。 「まあ、いいでしょう。カリー。そのためにあなたを呼んだのです。ここの設備ならあなたの腕を存分に発 シエルの言葉にカリーは、 「ふっふっふ。いいでしょう。教えてあげます。これがカレーを作るということを」
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| 私と利一さんと一緒に「新人SSトリオ」を結成しておりますユウヒツさん より、SSを寄贈していただきました。 マルシェキタ━━━(゜∀゜)━━━!! と、思わず叫んでしまうほどにお約束の方も登場し、期待を持たせる滑 ユウヒツさんへの感想はこちらに。SS作家にとって感想は力の源、どし |